AOP ピヨ教材 ・ ハーモニー編
「シーン」をあつめた音の決めかたと、12等分の大発明。ハモリの耳をもう一段かしこくする回シカ
①のさいごに「どの音の組み合わせがきれいに重なるかの深掘りは、純正律と平均律の話で」って言ってたピヨ! …でもその前に白状するピヨ。純正律と平均律って、そもそもなんの名前ピヨ? 楽器? 必殺技?
いい質問シカ! どっちも「ドレミのひとつひとつを、何Hzの高さにするか」を決めるルールの名前シカ。
読みかたは純正律(じゅんせいりつ)と平均律(へいきんりつ)。音の高さのものさしに2つの流派がある、と思えばいいシカ。
それだけ頭に入れたら、30秒まとめシカ。
①では、「ラ」220Hzと5度上の「ミ」330Hzが2:3で、660Hzの倍音どうしがぴったり重なって「シーン」だったピヨ。あれって5度だけの特別なわざピヨ?
5度だけじゃないシカ。――と、その前にことばの確認シカ。「〇度」はドレミで数えた音と音の距離の名前シカ。
ドから数えてミは3番目だから3度、ソは5番目だから5度。①のおまけでやった「ラとミ」も、ラから数えてミが5番目だから5度シカ。
ハモリの定番が「3度上」「5度上」なのはこの距離のことシカ。
そして、きれいにとけあう音程は、じつはぜんぶ かんたんな整数比になっているシカ。
なぜ整数比だと「シーン」なのか。波のゆれで見ると一目瞭然シカ。
そこでむかしの人は考えたシカ。「うねりゼロのきれいな整数比だけを集めて、ドレミぜんぶを決めてしまおう」――この決めかたが純正律(じゅんせいりつ・Just Intonation)シカ。
純正律のハモリは、共有倍音がぴったり重なるから、どこまでも澄んだ「シーン」になるシカ。
かんぺきな作戦ピヨ! 全部整数比で決めれば、世界はぜんぶ「シーン」…この話、もう終わりピヨ?
ところが、そうはいかなかったんだシカ。純正律には、音楽の歴史をゆるがした大きな弱点があるシカ…。
ドを基準に、整数比でドレミファソラシドの目盛りを打ってみるシカ。すると、おとなり同士のコマの幅がバラバラになるシカ。
大きい全音・小さい全音・半音の3種類の幅がまざった、デコボコのものさしになるんだシカ。
ドの曲を歌っているあいだは、これで最高にきれいシカ。
でも曲のとちゅうでおひっこし(転調)したら? たとえば「こんどはレを主役(新しいド)にしよう」とすると――
うたなら、そのつど耳で調整できるシカ。でもピアノの鍵盤やギターのフレットは、いちど作ったら目盛りを打ちなおせないシカ。
純正律で調律した昔の鍵盤楽器は、「この調はきれい、あの調はにごってボワンボワン」という、調によってアタリハズレのある楽器だったんだシカ。
え、じゃあ昔の作曲家は「この曲は転調したいけど、ピアノがにごるからやめとこ…」ってガマンしてたピヨ? 窮屈ピヨ!
まさにそういう時代が長くつづいたシカ。そこで発明されたのが、つぎの平均律シカ。
発想は大胆シカ。「きれいな整数比はいったんあきらめて、オクターブを12個の半音に、まったく均等に分けてしまおう」――これが平均律(へいきんりつ・Equal Temperament)シカ。
おとなりの半音との周波数の比は、ぜんぶ同じ「2の12分の1乗 ≈ 1.0595倍」シカ。
ここで便利な単位を紹介するシカ。音程の細かさをはかるセントシカ。半音=100セント、オクターブ=1200セント。
つまり平均律は「ぜんぶ100セント刻みの、完全に均等なものさし」シカ。どの音から数えはじめても形が同じだから、どの調でも同じように弾けるし、転調し放題。
現代のピアノも、ギターのフレットも、カラオケの音源も、ぜんぶこの平均律シカ。
ただし、タダではないシカ。均等に「ならした」ぶん、純正のきれいな整数比からは、ぜんぶの音程がすこしずつズレたシカ。
14セントって、半音(100セント)の14%でしょ…? そんなの誤差ピヨ、だれも気づかないピヨ!
単音なら気づきにくいシカ。でもハモると話がべつシカ。
①でやったとおり、3度ハモリでは1100Hzあたりの共有倍音どうしが重なるシカ。そこが14セントズレると――計算すると1秒に約9回のワンワンになるシカ。
①の耳なら、はっきり聞こえる速さシカ。ためしてみるシカ!
ほんとだ! 純正の3度は「シーン」なのに、平均律の3度にしたとたん、奥のほうでワンワンワンワン言い出したピヨ! で、5度はどっちもほとんど静か…図解の「3度だけズレが大きい」って、こういうことだったのかピヨ!
それが「生まれつきのうねり」シカ。ピアノやカラオケ音源の3度は、いつもこの速さでうねっているシカ。
生まれてからずっと聞いてきた響きだから、みんな慣れっこで気づかないだけなんだシカ。いちど気づいた耳は、もう戻れないシカ〜。
じゃあピアノで弾くかぎり、3度のワンワンからは逃げられないピヨ…。うたも平均律で歌うしかないなら、ハモリの「シーン」はあきらめるしかないピヨ?
ここがこの回いちばんの希望シカ。ピアノの鍵盤は目盛りに固定されているけど、声はスライダーと同じ、無段階シカ。
目盛りと目盛りのあいだを自由に歌えるシカ。
やることは①とまったく同じシカ。ワンワンをきいて、ゆっくりになる方向へ寄せて、消えたらゴール。
理屈も数字も、本番では要らないシカ。下のマシンで「平均律の3度から純正の3度へ寄せる」を、手で体験してみるシカ!
ピアノの位置からちょっと下げたら…スーッて消えたピヨ! うねりの耳がそのままコンパスになるんだピヨ! てことは、クワイアで3度パートの人がちょっと低めに歌うのって…
そう、音痴なんかじゃなくて、純正への高度な調整シカ!
アカペラやクワイアの鳥はだが「楽器より澄んで聞こえる」ことがあるのは、声どうしなら純正のハモリに乗れるからシカ。
もちろんいつも純正が正解ってわけじゃないシカ――メロディを歌うときやバンド・カラオケと合わせるときは平均律が基準になるシカ。
のばすハモリの瞬間だけ、耳で「シーン」に寄せる。この使い分けが、ハーモニーのうまい人が無意識にやっていることシカ。
さいごに3問だけ確認シカ。声に出して答えてみてシカ!
Q1. 純正律のハモリ(5度=2:3 など)がにごらないのは、なぜシカ?
Q2. 平均律は、なにをあきらめて、なにを手に入れた決めかたシカ?
Q3. 平均律の「長3度」と「5度」、うねりがはっきり聞こえるのはどっちシカ?
答え合わせピヨ!
A1. 周波数がかんたんな整数比だから、倍音どうしがぴったり重なって、うねりゼロになるピヨ(シーン1)。
A2. 純正のきれいな整数比をあきらめて、オクターブを12等分したピヨ。そのかわりどの調でも同じように演奏できる(転調し放題)を手に入れたピヨ(シーン3)。
A3. 長3度ピヨ。純正から14セントも広くて、1秒に約9回ワンワンするピヨ。5度はズレ2セントでほぼ無傷ピヨ(シーン3・4)。
そういえば、なんで12等分ピヨ? 10等分のほうがキリがいいのに…。あ、わかった、1年が12か月だからピヨ!
ちがうシカ、シカシカシカカカカ。じつは12は奇跡の数なんだシカ。
オクターブを12等分すると、その7コマぶん(=平均律の5度)が700セント。純正の5度は702セントだから、ズレはたった2セントシカ。
いちばん大事な5度と4度がほぼ無傷で残り、3度の14セントは「がまんできる範囲」――このバランスのよさで、平均律の12等分は世界標準になったんだシカ。
ハモリの現場では、その「がまんした14セント」を、キミの耳と声がとりもどせる――というのが今回の話だったシカ。
🧪 じっけん室 ― じぶんの声で「純正の3度」を作ってみよう
2人でためすシカ。1人が「アー」で低い音をのばし、もう1人が3度上をのばす。ピアノで音取りしてから、ワンワンが消えるまで2人目がほんのすこしだけ下げてみるシカ。消えた瞬間のその音が、ピアノより14セント低い純正の3度シカ。マイクで声を見ながらやるなら、こちらシカ。
🧪 じっけん室をひらく