AOP ピヨ教材 ・ ハーモニー編

② 純正律と平均律
― ドレミの目盛りには2つの流派があるシカ ―

「シーン」をあつめた音の決めかたと、12等分の大発明。ハモリの耳をもう一段かしこくする回シカ

この回のゴールはひとつシカ。「ピアノのドレミ(平均律)の3度は、生まれつきワンワンうねっている」――これを自分の耳で確かめることシカ。①で鍛えた「うねりをきく耳」で純正律の「シーン」平均律の「ワンワン」をきき比べて、最後は自分の手で純正の3度を探しあてるシカ!
カシカ
カシカ
声のしくみにくわしい先生。語尾は「〜シカ」。やさしく導くシカ。
ピヨ鳥
ピヨ鳥
学ぶ気まんまんの生徒。語尾は「〜ピヨ」。ときどき大胆にボケる。
📌 0. まず30秒まとめ
ピヨ鳥

①のさいごに「どの音の組み合わせがきれいに重なるかの深掘りは、純正律と平均律の話で」って言ってたピヨ! …でもその前に白状するピヨ。純正律平均律って、そもそもなんの名前ピヨ? 楽器? 必殺技?

カシカ

いい質問シカ! どっちも「ドレミのひとつひとつを、何Hzの高さにするか」を決めるルールの名前シカ。

読みかたは純正律(じゅんせいりつ)平均律(へいきんりつ)。音の高さのものさしに2つの流派がある、と思えばいいシカ。

それだけ頭に入れたら、30秒まとめシカ。

  • とけあうハモリの正体は、周波数のかんたんな整数比(ドとソなら2:3、ドとミなら4:5)。倍音がぴったり重なってうねりゼロ=シーンになるシカ。
  • この「シーン」になる比だけを集めて目盛りを打ったものさしが純正律。ハモリはどこまでも澄むシカ。
  • ただし純正律は、曲の主役の音(=調・キー)ごとの専用ものさし。主役が変わるたびに目盛りの作りなおしが必要で、鍵盤が固定のピアノには無理シカ。
  • そこでオクターブをまったく均等に12等分したのが平均律。いまのピアノもカラオケもぜんぶこれシカ。どの調でもOK、そのかわりぜんぶの音程がほんのすこしズレシカ。
  • そのズレ、5度(ドとソ)はほぼ無傷。でも3度(ドとミ)は耳でわかるくらい広くて、生まれつきワンワンうねっているシカ。うたは耳で純正に寄せて「シーン」を作れる――これが今回の話シカ。
✨ 1. 「シーン」の正体は整数比 ― 純正律
ピヨ鳥

①では、「ラ」220Hzと5度上の「ミ」330Hzが2:3で、660Hzの倍音どうしがぴったり重なって「シーン」だったピヨ。あれって5度だけの特別なわざピヨ?

カシカ

5度だけじゃないシカ。――と、その前にことばの確認シカ。「〇度」はドレミで数えた音と音の距離の名前シカ。

ドから数えてミは3番目だから3度、ソは5番目だから5度。①のおまけでやった「ラとミ」も、ラから数えてミが5番目だから5度シカ。

ハモリの定番が「3度上」「5度上」なのはこの距離のことシカ。

そして、きれいにとけあう音程は、じつはぜんぶ かんたんな整数比になっているシカ。

  • オクターブ(ドと高いド)= 1:2 (220Hz と 440Hz)
  • 5度(ドとソの距離)= 2:3 (220Hz と 330Hz)
  • 4度(ドとファの距離)= 3:4 (220Hz と 293.3Hz)
  • 長3度(ドとミの距離)= 4:5 (220Hz と 275Hz)

なぜ整数比だと「シーン」なのか。波のゆれで見ると一目瞭然シカ。

かんたんな整数比 = 波が「みじかい距離」でぴったり出会う 5度(2:3) 低い音の 1ゆれめ 2ゆれめ 高い音の 1ゆれめ 2ゆれめ 3ゆれめ ← ここでぴったり出会う! 長3度(4:5) 1 2 3 4 1 2 3 4 5 ← 4回と5回で出会う! 出会うところでは波がそろう = 倍音がぴったり重なる場所がある = うねりゼロの「シーン」 220Hzのとき:5度の共有倍音は 660Hz、長3度は 1100Hz(①のおさらいシカ)
🦌 カシカの図解:比がかんたんなほど、みじかい距離で波がぴったり出会うシカ。5度は「2回 対 3回」、長3度は「4回 対 5回」で出会う。この出会いが共有倍音の「とけあい」シカ。

そこでむかしの人は考えたシカ。「うねりゼロのきれいな整数比だけを集めて、ドレミぜんぶを決めてしまおう」――この決めかたが純正律(じゅんせいりつ・Just Intonation)シカ。

純正律のハモリは、共有倍音がぴったり重なるから、どこまでも澄んだ「シーン」になるシカ。

ピヨ鳥

かんぺきな作戦ピヨ! 全部整数比で決めれば、世界はぜんぶ「シーン」…この話、もう終わりピヨ?

カシカ

ところが、そうはいかなかったんだシカ。純正律には、音楽の歴史をゆるがした大きな弱点があるシカ…。

📏 2. 純正律の弱点 ― 「専用ものさし」問題
カシカ

ドを基準に、整数比でドレミファソラシドの目盛りを打ってみるシカ。すると、おとなり同士のコマの幅がバラバラになるシカ。

大きい全音・小さい全音・半音の3種類の幅がまざった、デコボコのものさしになるんだシカ。

ドの曲を歌っているあいだは、これで最高にきれいシカ。

でも曲のとちゅうでおひっこし(転調)したら? たとえば「こんどはレを主役(新しいド)にしよう」とすると――

純正律のものさし(ドが主役のとき) ファ → コマの幅が「大・中・小」の3種類まざったデコボコものさしシカ レを新しい主役にして、同じ形を作ろうとすると… ファ♯ 「ラ」の位置が合わない!(22セントのズレ) ドのために作った目盛りは、レの曲では使いまわせない = 調ごとの専用ものさし
🦌 カシカの図解:上がドのための純正律ものさしシカ。レから同じ「大・中・小」の形を積みなおすと、「ラ」などの目盛りが上の段とズレてしまうシカ。半音の2割ぶん(22セント)――①の耳ならしっかりワンワン聞こえる大きさシカ。

うたなら、そのつど耳で調整できるシカ。でもピアノの鍵盤やギターのフレットは、いちど作ったら目盛りを打ちなおせないシカ。

純正律で調律した昔の鍵盤楽器は、「この調はきれい、あの調はにごってボワンボワン」という、調によってアタリハズレのある楽器だったんだシカ。

ピヨ鳥

え、じゃあ昔の作曲家は「この曲は転調したいけど、ピアノがにごるからやめとこ…」ってガマンしてたピヨ? 窮屈ピヨ!

カシカ

まさにそういう時代が長くつづいたシカ。そこで発明されたのが、つぎの平均律シカ。

⚖️ 3. 12等分の大発明 ― 平均律とセント
カシカ

発想は大胆シカ。「きれいな整数比はいったんあきらめて、オクターブを12個の半音に、まったく均等に分けてしまおう」――これが平均律(へいきんりつ・Equal Temperament)シカ。

おとなりの半音との周波数の比は、ぜんぶ同じ「2の12分の1乗 ≈ 1.0595倍」シカ。

ここで便利な単位を紹介するシカ。音程の細かさをはかるセントシカ。半音=100セント、オクターブ=1200セント

つまり平均律は「ぜんぶ100セント刻みの、完全に均等なものさし」シカ。どの音から数えはじめても形が同じだから、どの調でも同じように弾けるし、転調し放題

現代のピアノも、ギターのフレットも、カラオケの音源も、ぜんぶこの平均律シカ。

ただし、タダではないシカ。均等に「ならした」ぶん、純正のきれいな整数比からは、ぜんぶの音程がすこしずつズレたシカ。

平均律のものさし(100セント刻み・完全に均等) ファ 純正律の目盛り(うねりゼロの位置) 3度は 14セントもズレ! 5度はズレたった2セント ラは16セント 平均律のドレミは、純正の「うねりゼロの位置」から音程ごとにすこしずつズレている とくに長3度(ミ)のズレが大きいのがポイントシカ
🦌 カシカの図解:上が平均律(100セント刻み)、下が純正律(うねりゼロの位置)シカ。5度(ソ)はほぼ一致するのに、長3度(ミ)は14セント、6度(ラ)は16セントもズレているシカ。
ピヨ鳥

14セントって、半音(100セント)の14%でしょ…? そんなの誤差ピヨ、だれも気づかないピヨ!

カシカ

単音なら気づきにくいシカ。でもハモると話がべつシカ。

①でやったとおり、3度ハモリでは1100Hzあたりの共有倍音どうしが重なるシカ。そこが14セントズレると――計算すると1秒に約9回のワンワンになるシカ。

①の耳なら、はっきり聞こえる速さシカ。ためしてみるシカ!

🎧 4. 純正 vs 平均律 きき比べマシン

⚖️ 純正 vs 平均律 きき比べマシン

「▶ 音を出す」で2つの声(それぞれ倍音入り)がハモるシカ。ボタンで純正/平均律を切りかえて、奥のほうのワンワンに耳をすますシカ。オレンジの波は共有倍音の「音量のゆれ」の実況中継シカ。

💡 きき比べポイント:3度は純正⇔平均律でワンワンの差がはっきり出るシカ。5度は平均律でもワ〜〜ンがゆっくりすぎて、ほぼシーンに聞こえるはずシカ。音が出ないときは端末のマナーモード・音量を確認シカ。

ピヨ鳥

ほんとだ! 純正の3度は「シーン」なのに、平均律の3度にしたとたん、奥のほうでワンワンワンワン言い出したピヨ! で、5度はどっちもほとんど静か…図解の「3度だけズレが大きい」って、こういうことだったのかピヨ!

カシカ

それが「生まれつきのうねり」シカ。ピアノやカラオケ音源の3度は、いつもこの速さでうねっているシカ。

生まれてからずっと聞いてきた響きだから、みんな慣れっこで気づかないだけなんだシカ。いちど気づいた耳は、もう戻れないシカ〜。

🎤 5. うたは目盛りのすきまを歌える
ピヨ鳥

じゃあピアノで弾くかぎり、3度のワンワンからは逃げられないピヨ…。うたも平均律で歌うしかないなら、ハモリの「シーン」はあきらめるしかないピヨ?

カシカ

ここがこの回いちばんの希望シカ。ピアノの鍵盤は目盛りに固定されているけど、声はスライダーと同じ、無段階シカ。

目盛りと目盛りのあいだを自由に歌えるシカ。

🎹 平均律のミ(鍵盤はここに固定) ✨ 純正のミ(うねりゼロ) 🎤 うたは耳でここへ寄せられる(約14セントさげるだけ)
🦌 カシカの図解:3度ハモリのとき、うたは平均律の位置からほんのすこし(14セント)寄せるだけで、うねりゼロの純正のハモリに乗れるシカ。

やることは①とまったく同じシカ。ワンワンをきいて、ゆっくりになる方向へ寄せて、消えたらゴール

理屈も数字も、本番では要らないシカ。下のマシンで「平均律の3度から純正の3度へ寄せる」を、手で体験してみるシカ!

🎯 純正の3度をさがせ! ― 平均律から耳で寄せるマシン

スタート位置は平均律の3度(ピアノのミと同じ)シカ。「▶ 音を出す」でハモリが鳴ったら、スライダーで2つ目の音を動かして、ワンワンが消える場所=純正の3度を探すシカ。

220.0 Hz(ラ・固定)
277.2 Hz

💡 コツも①と同じシカ:ワンワンがゆっくりになる方向へ、じわじわ動かすシカ。数字を見ずに耳だけでたどりつけたら一人前シカ。音が出ないときはマナーモード・音量を確認シカ。

ピヨ鳥

ピアノの位置からちょっと下げたら…スーッて消えたピヨ! うねりの耳がそのままコンパスになるんだピヨ! てことは、クワイアで3度パートの人がちょっと低めに歌うのって…

カシカ

そう、音痴なんかじゃなくて、純正への高度な調整シカ!

アカペラやクワイアの鳥はだが「楽器より澄んで聞こえる」ことがあるのは、声どうしなら純正のハモリに乗れるからシカ。

もちろんいつも純正が正解ってわけじゃないシカ――メロディを歌うときやバンド・カラオケと合わせるときは平均律が基準になるシカ。

のばすハモリの瞬間だけ、耳で「シーン」に寄せる。この使い分けが、ハーモニーのうまい人が無意識にやっていることシカ。

①の「うねりをきく耳」は、この回でそのまま純正ハモリへのコンパスになったシカ。クワイアでロングトーンをハモるときは、自分のパートの音を「合ってるはず」と思いこまずに、ワンワンが消える場所を毎回耳で探しにいくシカ。ピアノで音取りをしたあとでも、ハモった瞬間の微調整は耳が主役シカ。
✅ 6. たしかめクイズ
カシカ

さいごに3問だけ確認シカ。声に出して答えてみてシカ!

Q1. 純正律のハモリ(5度=2:3 など)がにごらないのは、なぜシカ?

Q2. 平均律は、なにをあきらめて、なにを手に入れた決めかたシカ?

Q3. 平均律の「長3度」と「5度」、うねりがはっきり聞こえるのはどっちシカ?

ピヨ鳥

答え合わせピヨ!

💡 答えを見る

A1. 周波数がかんたんな整数比だから、倍音どうしがぴったり重なって、うねりゼロになるピヨ(シーン1)。

A2. 純正のきれいな整数比をあきらめて、オクターブを12等分したピヨ。そのかわりどの調でも同じように演奏できる(転調し放題)を手に入れたピヨ(シーン3)。

A3. 長3度ピヨ。純正から14セントも広くて、1秒に約9回ワンワンするピヨ。5度はズレ2セントでほぼ無傷ピヨ(シーン3・4)。

🎁 7. おまけ:なんで「12」等分なの?
ピヨ鳥

そういえば、なんで12等分ピヨ? 10等分のほうがキリがいいのに…。あ、わかった、1年が12か月だからピヨ!

カシカ

ちがうシカ、シカシカシカカカカ。じつは12は奇跡の数なんだシカ。

オクターブを12等分すると、その7コマぶん(=平均律の5度)が700セント。純正の5度は702セントだから、ズレはたった2セントシカ。

「5度」の大きさくらべ(セント) 690700710720 ✨ 純正の5度 702 12等分 700 → ズレたった2セント! (もし10等分なら)720 → 18セントもズレてガタガタ
🦌 カシカの図解:オクターブを等分するとき、12という数だけが「純正の5度をほぼ無傷(2セント差)で残せる」シカ。10等分だと5度が18セントもズレてしまうシカ。

いちばん大事な5度と4度がほぼ無傷で残り、3度の14セントは「がまんできる範囲」――このバランスのよさで、平均律の12等分は世界標準になったんだシカ。

ハモリの現場では、その「がまんした14セント」を、キミの耳と声がとりもどせる――というのが今回の話だったシカ。

🧪 じっけん室 ― じぶんの声で「純正の3度」を作ってみよう

2人でためすシカ。1人が「アー」で低い音をのばし、もう1人が3度上をのばす。ピアノで音取りしてから、ワンワンが消えるまで2人目がほんのすこしだけ下げてみるシカ。消えた瞬間のその音が、ピアノより14セント低い純正の3度シカ。マイクで声を見ながらやるなら、こちらシカ。

🧪 じっけん室をひらく

この回の芯:純正律は「シーン」をあつめた整数比の目盛り、平均律は「どの調でもOK」の12等分の目盛り。平均律の3度は生まれつきワンワンしている――でも声は目盛りのすきまを歌えるシカ。耳で寄せて「シーン」を作れるのは、うたのハーモニーだけの特権シカ!